FGP昭和里美村ゴシック
孔版をイメージした輪郭を荒らしたフォントです。
昭和時代に活躍した孔版文字界の神様とまで言われた草間京平氏の手描きガリ版文字をオマージュしたフォントです。草間京平は本名を佐川義高といい茨城県の里美村出身です。その出身地にちなんで里美村というフォント名にしました。市町村合併で今は存在しない村ですが子供の頃から何度か行ったことがあり牧場があったりいいところです。
字組サンプルは当時の名人の一人である水谷清照氏が昭和27年に新創刊した「孔版展望」の扉に推薦文として寄稿した文章を再現したもの。寄稿文も基本的には直筆ですから凄い世界です。
FGP昭和里美村ゴシックで組んでインクジェットプリンタで普通紙に印字。草間京平氏の沿溝ゴシックをイメージしたかなりリアルな仕上がりだと思います↓。
写真のこの焼けた冊子は草間京平氏直筆孔版の文字です。5pt程度の小さめの文字です。
沿溝の名前の由来はヤスリの目の溝に沿って構成されているというもの。私が作成しているほとんどの文字、このサイトに表示させているオリジナルウェブフォントも基本的には一定の角度に沿ってデザインしていますから広義では沿溝ゴシックと言えるでしょう↓。
2−3ミリ程度の文字を鉄筆で芸術作品レベルで美しくガリ切りするというおそるべし達人技で、草間京平氏以外にも昭和時代には微細な文字を美しく描く超人たちが何人かおりました。存命であればみんな百歳以上ですのでもはや途絶えてしまった職人技でまだデザイナーという名前の職業が存在しなかった頃の話です。その時代は文字を美しく描くことができけなければデザイナーとしては認められませんでした。なかにはハガキサイズ、マッチ箱サイズに百人一首を全部描いたり、7年もかけて丸々一冊手書きで描き上げた神レベルの強者もおり、現物冊子は手に取るだけで震えがくるほど感動ものです(博物館級だと思っていますので絶対ネットでは公開しません)。
これらの芸術品とも言える印刷物を手に取ると現代のいわゆるデザイナーが手掛けているようなあらゆる装丁物や印刷物のフォントが酷くレベルの低いものに見えてきます。自分が作ったのも含めて。
そんな時代の美しい冊子を数多くコレクションしていまして、資料の中の手描き文字をイメージしたフォントになります。漢字はJIS第二水準まで作っており5年くらいの年月をかけています。
フォントの線は通常よりもドットの数が多いですので文字データとしてはかなり重くなります↓。
店舗では時々、これらの資料の価値が理解できそうな人には見せています。