奥渋レタープレスのイベント

2月28日、奥渋おくしぶSHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS(以降SPBSエスピービーエス)さんにて、イベントが開かれました。日曜の朝10時、予想以上の人数にんずうのお客様(定員20名のところ30名近く/締め切りになってしまった方々申しわけございませんでした)にお越しいただきまして本当ほんとうにありがとうございます。

※この記事はさきほど話してきた内容を自分で思い出しながら記録したものですので、覚えている範囲にて書いています。

http://www.shibuyabooks.co.jp/bookshop/okushibu_letterpress/

SPBS2016年2月28日フォント博士、大谷秀映さんに「タイポグラフィ」を学ぶ。

SPBS2016年2月28日フォント博士、大谷秀映さんに「タイポグラフィ」を学ぶ。

SPBS2016年2月28日フォント博士、大谷秀映さんに「タイポグラフィ」を学ぶ。

↑来場者には、入口でこの日のために手作りで用意した、小冊子、カード、辞書じしょレプリカがわたされました。レプリカなどの製作は過去記事に紹介しています。初めてこのページにいらした方は1番から8番まで順に見て下さい。この日公開した印刷物を製作する過程がおおまかに見れます(実際は構想を含めて年単位でかかっています)。

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フェア「奥渋レタープレス」開催記念

フォント博士、大谷秀映さんに「タイポグラフィ」をまなぶ。

始まる前に、私のほうから来場者に、このイベントにいらした経緯けいい、デザイナーさんの比率をお聞きし、2/3位がデザイナーさん、1/3ほどがデザイン関係かんけいではない方ということを確認しました。ということでなるべくわかりやすく & デザイナーさんにも対応した感じで進行。イベントはSPBSの担当の方の司会により始まりました。要所で質問により、回答というスタイル。

Q:どういうきっかけで日本語の文字を作り始めましたか?

A:もともと、紙のデザインの仕事をしており、写植しゃしょくなどを使った製作スタイルから入り、自然と文字について身近に感じるようになり、90年代に古代文字をフォントとして作り出したこと。など。

SPBS2016年2月28日フォント博士、大谷秀映さんに「タイポグラフィ」を学ぶ。

↑90年代に作っていた古代文字フォント。当時は1バイトのフォントでしたがいまは日本語化中。

HOMAGE TO HELVETICA

The Helvetica Book

そして、10年以上前、オマージュトゥタイプフェイスという本を目にし、ヘルベチカの本というのを作った。左がHOMAGE...ですが、壊れてしまったので自分で修理中の写真しゃしん

Q:そういう本はどういう経緯で出したのですか?

当時作っていたフォントや作品などが海外のデザイン書籍などで取り上げられ、日本の出版社さんなどからもお声がけいただくようになりました。90年代に、複数人でフォントの本を作ったこともありましたが、いつか自分でも本を作ってみたいと思っていたので自然にその流れの中で本を作ることになりました。

ヘルベチカの本については、ヘルベチカやそのベースとなった文字の作者は既にこの世には存在していないので、私のようなどこの馬の骨ともわからないような部外者は、何も書くことができない。ただ、その生い立ちをなぞるだけ & それでもいくつかの間違いもあり反省もある、など。以下省略。

そうした流れで、昨年度は「続・和文フリーフォント集」出版。第一弾は5年前に出し7刷りまで、第二弾の続編は最近増刷の話など。

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明治教科書明朝について

次は今回のメインである古い教科書の話です。

明治時代の教科書年表

年表を作りました(使用フォント:FGP明治教科書旧字きゅうじ明朝)。私が持っている昔の教科書を時代ごとに分類。ただ、私は学者ではないのでそれほど詳しいわけではなく、純粋に文字のカタチだけに興味を持っています。また、日本のタイポグラフィデザイン書籍などでは、有名な活字をメインにしているが、自分の場合は独自どくじ資料を元に昔の教科書を分類整理し、一世紀せいき前の人間が書いた文字を今の時代に合わせて編集し、リデザインしながらフォント化している、など。

明治時代の教科書

教科書は数千冊の中から絞り込み、時代によって分類。そして、古いものほどクセがあって読みにくい。大正時代など近代に入るほど読みやすくなる。新聞や、パソコンなどのバンドルとして進化するうちに読みやすい文字になってしまった、しかし、自分はそこから時代に逆行し、100年前当時の活字に習ってフォント化している、そういうへそ曲がりが居てもいいんぢゃないか、など。

SPBS2016年2月28日フォント博士、大谷秀映さんに「タイポグラフィ」を学ぶ。

↑トークショーの様子。トークショーというと話すのが得意な人が流暢にしゃべる印象がありますが、人前で話すのはあまり慣れていません。普段はパソコンの前で独り言ばかりですが今日はなんとか頑張りました。

SPBS2016年2月28日フォント博士、大谷秀映さんに「タイポグラフィ」を学ぶ。

↑明治時代の辞書の活字をプロジェクターに映して。今日初めて知りましたが、iPhoneからプロジェクターに繋げるのですね。便利な時代になったものです。プロジェクターには変体仮名へんたいがなの「ゆ」が映ってます。そば屋の看板やメニューなど、いま、変体仮名のフォントを作り始めている話などを少し。

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明治教科書明朝タイポグラフィ

和文タイポグラフィ

↑来場者にお渡しした辞書レプリカのタイポグラフィ。日本人は欧文おうぶんのタイポグラフィをありがたがる、かっこいいと感じる風潮があるが、あ、いや、今はそういうことを云う人はあまりいないかもしれないが、この一世紀前の文字で作った和紙のタイポグラフィはなんて美しいんでしょう。皆さんにお渡ししているのは、蛍光けいこう色刷りあり、それぞれ色が違います。スミ刷りのものは、実はウラ刷りです。薄い透ける和紙なのでそうした実験的な試み。

和文タイポグラフィ

↑来場者にお渡しした私の名刺のウラです。ポジティブな日本語の挨拶などをタイポグラフィで表現、その他、グリーティングカードなども作成中。

和文タイポグラフィ半角カタカナ名刺

↑名刺をタイポグラフィで表現中。日本人が海外に行った場合は英語の名刺を作ると思うが、これはその逆。外人が日本に来て名刺を作る場合に、単なる普通のフォントではなく、カタカナを組み合わせて記号化して作る提案。かっこいい日本語フォントを作る。

和文タイポグラフィ半角カタカナ名刺

↑名刺を明治教科書明朝タイポグラフィで平仮名で表現する提案。

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おわりに

以上、最後はこの明治時代のオールド明朝フォントは、私が作っているのではなく、一世紀前に生きた人が書いた文字を活字化したものを更に私が編集してフォントとして成り立たせたものです。私は文字を作っているのではなく江戸時代に生まれた昔の人の魂によって作らされているのです。

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質疑応答

一つ目。欧文はどうしたのですか?

A:ガラモンやGoudyなどのオールドローマン系を意識して作っています。

明治教科書明朝とオールドローマンとの比較図

↑会場には欧文の資料は忘れたので後でネットにアップします、ということで記録として作っている他のオールドローマンとの比較図です。黒いのがFGP明治教科書明朝です。オールドローマンを意識しつつも、オールドローマンの現代の使用デバイス環境における最適化を考えています。例えばスミだまりや拡大した時のエッジの綺麗さ、ディセンダーの長さなどを意識して作っています。

二つ目。半角フォントはカナ文字界を意識しましたか?

半角かなグリフ解剖図

A:多少は意識していますが、あれはカタカナだけ、というのとあのルールに沿ったのでは読むのに無理があるのではと考えますので、私は平仮名、片仮名、欧文、数字記号、漢字の全角を総合的に揃えつつ、読み物になった場合に適格に機能するという考えで作っています。

三つ目。漢字は何かベースにしているものはありますか?

A:ノーコメント。自分が作っているフォントは、IPAベース、源ノ角ベース、オープンソースベース、完全オリジナルがありますが、一番ネックになるのがライセンスですのでコメントは控えさせていただきます。IPAではないのと、ライセンスに抵触しないよう細心の注意をはらっています。

四つ目。さきほど見た教科書の挿絵さしえは細かいがいつ位から?

A:資料を精査しないとなんとも云えませんがたぶん大正時代に入ってからだと思います。古いものは浮世絵うきよえのような版画はんが風です。すみません、資料はたくさんありますが、絵はあまり見ておらず、今のところ文字しか見ていません。

五つ目。教科書たいについて?

A:教科書体に詳しくありません。近代の教科書はいわゆる教科書体のような字体ですが、明治期の教科書はほとんどが明朝体です。

六つ目。製本はどうやっているのですか?

A:A4で和製本ベースです。最初和綴じで進めていましたが和風になりすぎましたので糸綴じ部分をミシン縫いで。針は16番、糸は20番木綿と、太いものを使います。20番の木綿はほとんど色の選択肢がありません。イラレでレイヤー、トンボは単純な真ん中線、普通の洋製本に比べて驚くほど簡単にできます。

七つ目。なぜ教科書をベースにしたのですか?

A:一般的なデザイン本などでは、有名な活版所由来の活字から作られたフォントが紹介されます。しかし、明治期の日本で、しかも当時生きた子供たちの読み書きに触れる初めての書物として、教科書は当時の、「読みやすく小学生にも理解できる文字」ということで作られたはずと予想されますのでそこに着目しました。

和文タイポグラフィグリーティングカード

↑タイプフェイス文字を使ったグリーティングカードタイポグラフィ(これは試作品ですので実際の色とは異なります)。SRGさんから発売はつばいです。一般的にデザイナーはありもののフォントでこうした文字の特徴を全面に出した製品はライセンス上作れない(作るのが憚られる)はずですが、私の場合はこうした製品が作れます。100%コットン紙のグリーティングカードは、奥渋、SPBSさんとMJ & Friendsさんの店頭で購入できます。

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あとがき

人はできあがったアウトプットだけを見て、製品を購入しているのが一般的かと思いますが、私はその製品ができあがる過程がむしろ大事だと思っています。文字のような、デザインの根幹に関わるものはそれがどういう過程を踏んで出現したのかが重要と考えますので、このような記録を、元資料とともになるべく残すようにしています。ですので今回のようなイベントを開催してくださった書店SPBSさんと、活版グリーティングカードを手作りで印刷していただいたSRGさんには大変感謝しております。SRGさんは、元々英国の活版機ADANAやハイデルベルグの巨大な活版機など古い印刷機材をコレクションしており、校正機を奥渋のもう一つのイベント会場であるご近所の「コーヒー器具とハンドクラフトの店-MJ & Friends」さんで3月3日まで展示しています。

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価格について

以上、今回のこのイベントに関わった全ての方々に感謝致します。来場してくださったお客様ありがとうございました!

そして何人もの方々がFGP明治教科書明朝を購入いただき大変感謝しております。このフォントは現在ネット販売ではなく(遠方で上京するのが難しい方はメールにてご案内します)、奥渋のSPBSさんとMJ & Friendsさんのみで購入できます。実際にフォントで組んだ古い教科書のレプリカ見本帳、グリーティングカード二枚、活版CD-ジャケットが付録されます。一般、個人デザイナー、フリーランスなど6,000円+税/デザイン会社法人など30,000円+税、文字を主体としたサービス & 製品目的は応相談にて、使用ユーザーによる価格変動制です。

※今回のこのイベントは、明治教科書明朝フォント作成計画第一弾としての始まりにすぎません。第二弾を3ヶ月後位に予定していますので、ご興味のある方は、フォントグラフィックサイトに会員登録なさるか、Facebookのfontgraphicページへいいねをお願いします。お知らせのご案内をさせていただきます。

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